大人気だった海外ドラマ「ウォーキング・デッド」が終わろうとしている。
現在シーズン最終話までついにあと1話となってしまったところだが、シーズン3の放送中にどハマリしてから何年にも渡り熱心な視聴者だった自分としては、悲しいと同時にやるせなさのようなものも感じている。
ウォーキング・デッドは2010年10月31日にアメリカで放送が開始されたドラマで、日本ではAmazon Primeなどの動画配信サイトで視聴できていた(※2021年10月から放送のシーズン11はDisney+の独占配信となり、2021/11/26にAmazonで確認したところPrime対象作品ではなくなっていた…)。
ストーリーは犯人確保の途中で撃たれて意識不明になった保安官が、昏睡から目を覚ますと世界はゾンビだらけになっていた・・・というもので、じゃんじゃん人が死ぬ非情な展開やリアルすぎるゾンビの特殊メイクなどで人気になった。
そもそもあまりにもゴア描写がえげつないため、「人を選ぶ」ドラマではあった。しかし日本でも人気の絶頂だった頃にはウォーキング・デッドの大ファンと名乗る芸能人が何人も出てきて、作品について語り合うような番組も地上波で放送されていたほどだったのだ。身近にも何人も「見ている」という人がいたし、作品を話題に盛り上がっていた。現在、その盛り上がっていた人達の中で「最新話まで見ている」という人は一人もいない。悲しい。
シーズン別・平均視聴者数グラフ
そんなウォーキング・デッドの視聴者数だが、ファンサイト「Walking Dead Wiki」では全米視聴者数がリストアップされている。これをグラフ化してみた。
なんということでしょう。シーズン9・シーズン10はシーズン1の平均視聴者数を遥かに下回ってる!これでは終了も仕方ないか…
こちらはシーズン全話の視聴者数をグラフにしたもの。この下降っぷり、悲しくなってくるな…。
ちなみにこちらは比較用、2011年~2019年に放送されていたドラマ「Game of Thrones」の視聴者数推移。見事な右肩上がりのままフィニッシュ!という感じでWalking Deadのグラフとの差がえぐい。
ここからはネタバレ注意
シーズン1~シーズン5、人気増大期
シーズン1で保安官の職務の最中に撃たれて意識不明の重体になり、その後昏睡から目覚めた主人公リックは、アトランタに向かいそこで生存者グループと出会う。グループのキャンプ地で妻と息子、そして親友である同僚と再会すると、仲間と共に救いを求めてCDC(アメリカ疾病管理予防センター)に向かう。しかしすでに電力などのリソース不足に陥っていたCDCはウイルスなどの拡散を防ぐため、唯一残っていた研究者自身の手によって爆破されてしまう。
シーズン2では安住の地を探し求める中で息子が誤射により命の危機に陥り、治療のために案内されたおじいちゃんの農場でなんだかんだあるが、結局農場もウォーカーによって壊滅状態になり脱出することに。
シーズン3では刑務所を見つけてそこにみんなで定住しようとするが、娘が生まれて妻が死んだりとなんだかんだしている間に「総督」という闇を抱えたえげつない男率いる敵対勢力に狙われ、なんとか追い払う。
シーズン4では刑務所内で感染症が蔓延し大混乱になるだけでなく、総督がまた攻めてきて刑務所を捨てて散り散りに逃げることになる。そして全ての人々の聖域を名乗る「終着駅」という場所の存在をラジオや看板で知り、なんだかんだありつつもそれぞれが終着駅へ向かう。
そしてここで最も平均視聴者数の多いシーズン5に突入。リック達が終着駅でカニバリズム集団である新たな敵勢力に捕まったところからスタートし、その後理想的な居住区を見つけたものの、平和なその居住区でもなんだかんだ血なまぐさい事件が起きるというストーリーライン。(ついついなんだかんだを乱用してしまった…)
シーズン1からシーズン5は人気上昇も右肩上がりで、
・ありきたりな中途半端なホラーではなく、スプラッター要素とサバイバル要素がマッチした作品
・気候変動やテロなど、世界の危機を薄々感じながら生きている人々にとって、文明が崩壊した世界の姿を疑似体験でき、来たるべき終末に備えて無意識化でシミュレーションができる
・日常生活では起こりえない残酷な事件の数々が刺激的
・特殊効果が素晴らしく本当にグロい
などの理由で、(万人とは言い難いけど)人々からの支持を得ていたようである。
また当初の敵であったゾンビ的な存在「ウォーカー」の脅威だけでなく、仲間内でのいざこざや明らかに殺意を持って接触してくる敵対勢力など、人間自体の怖さや残酷さが描かれたことも(フィクションでは「人間の怖さ」は一般的なテーマではあるものの)エキサイティングだった
シーズン6あたりからの人気の衰退
シーズン数も6を超えるとドラマ自体の実力が物を言うようになるのだろうか、ファンからも続々と不満が出てくるようになる。
興味を惹かれないキャラや必要ないキャラが多く感じる
ウォーキング・デッドはとにかく登場人物の数が多い。前述のWalking Dead Wikiのキャラクターページを地味に数えてみたところ、442人もいた・・・(数え間違ってたらごめん)。しかもその約450人のうち、シーズン10が終わった現在で生存確定しているのはたった43人!
圧巻の死亡率97%越え!!!
さして興味を惹かないキャラがバンバン出てきて死んでいく。こりゃ「ついてけないわ」という人が出てもおかしくない。それに推しが死ぬと見る気なくなるだろうしなぁ。
海外の記事ではT-ドッグ、ベス、ゲイブリエル、ギャレス、ニコラス、オリビアなどの名前が具体的に「いらんキャラ」として挙げられていたりもした。個人的にはベスはいらないと思うけどT-ドッグは好きだよ…ギャレスもいないと話進まないよ…
どうでもいい恋愛で物語の良さが死ぬ
「突然ねじ込まれる恋愛エピソードで興が覚める」と言えばマトリックスを真っ先に思い出してしまうけど、ウォーキング・デッドでもそういった指摘が出ている模様。
確かにジェシーとリックの件も今考えれば不要だったなぁという気がしなくもないし、リックとミショーンの件もいきなりすぎてびっくりした。シーズン10ではついにダリルの恋人が登場し、全世界のファンがブーブー言っていると話題になったのも記憶に新しすぎる(誰だよダリルはアセクシャルだって言ってた製作陣)。ただし全ての恋愛要素が駄目だと言っているわけではなく、例えばマギーとグレン、タラとデニース、カールとイーニッドなどちゃんと経緯を見てきたカップルがくっつくのは(個人的には)全然問題なく受け入れられる。
ニーガン
総督や終着駅の人々も恐ろしい敵ではあったけど、ニーガンはこれまでの悪役とは一線を画す悪役で、「ユーモアたっぷりに悪をエンジョイしている」という恐ろしさ。みんな怖がりながらも「こいつがどういう奴なのかもっと見てみたい」と思っていたはず。
しかし「もっと見たい」と思った翌週にはみんなの思い入れの強いキャラクターを2人も、しかも大の大人の視聴者が目を覆うほどのショッキングなやり方で殺害したので、あまりの惨さに多くのファンが見るのをやめたと言っているそうで。
実際にニーガンがリックの仲間2人を凄惨すぎるやり方で殺したシーズン7第1話の視聴者数は1703万人(シリーズ全話の中で第2位の視聴者数)だったが、次の話(S7-2)では1246万人と約450万人も激減している。
ニーガンと救世主の登場以降、作品が「拷問ポルノ」に変貌してしまったという批評も見かけたし、救世主の支配下において、特にリックやダリルなどずっと見続けていた主要キャラクターが牙を抜かれて圧政の中生きている姿は辛かった。
さらに、救世主との戦いが終結したものの、リック達を苦しめた大悪党であるニーガンが凄惨な死を遂げるでもなく牢で生かされているということが不満の原因になったとも言われているとか。見ていて「こいつ絶対許せない」と思う奴が壮絶な死に方するとスッキリする心理、わかるな…。(そう思って振り返ると総督もギャレスも、アルファですら結構あっさりした死にざまだったような気もするけど)
グレンの死
前述の「ニーガンに凄惨すぎるやり方で殺された仲間」の片方がグレンだった。本当にえげつない殺され方で、特殊メイクなどにより飛び出した目玉が動く様子は悲しいのにグロかったし、完全に肉片になったグレンの頭部が画面に映ったのも本当にキツかった(作り物とわかっていても)。
死に様が惨かったというだけではなく、グレンがキャロルと並んでシーズン1から生き延びてきた歴史の古いキャラクターだったことも大きい。戦闘に長けているというわけでもなく豪胆さや派手さはなかったが、グループの「良心」であったグレンは視聴者に愛されていたと思う。愛着のあるキャラを惨たらしく殺され、作品を見限ったとしても不思議はない。
カールの死
カールの死を「見るのをやめた原因」として挙げている人も多かった。視聴者はまだカールがぷくぷくのほっぺをした子供だった頃から彼をずっと見てきた。撃たれて瀕死になったり、シェーンに影響を受けて冷酷な傾向を見せ始めたり、母を慈悲ゆえに手にかけたり、片目を失ったり、まだ幼いのに波瀾万丈だった。そして守られる側からサバイバーとして気概を持った男になり、イーニッドと淡い恋をして…と、その成長を見守ってきたようなもの。そして何より、カールはこの終末世界で未来を担っていく次世代の人材だったはずなのに、知らぬ間にウォーカーに噛まれて地味な死を迎えた。「his unnecessary death(不必要な死)」と言っているファンがいたけど、完全に同意してしまう。
リックのリタイア
実を言うとリックが作品から姿を消すシーズン9第5話ではすでに視聴者数は500万人台にまで減少しており、リックのリタイアが作品の視聴者数に大きく影響したということはないと(個人的には)思う。ただ、我々視聴者はリックを通してウォーキングデッドの世界を見てきたわけで…。その彼がいなくなったというのは、うまく言えないけど、どこに焦点を合わせていいかわからなくなったという感じがする。
それでも見届けたい、作品の終焉
シーズン7までは表現しづらいけども、グッチャグチャのスプラッタやバンバン死ぬ人々という要素がありながらも作品の空気はカラッとしていたような気がする。シーズン7以降はなんだかジメっとしている。ずっと腐臭がする感じ。
ショーランナーが変わったのでシーズン9、10の作品としての出来はよくなったという意見もあるが、個人的にはそれには賛成しかねる。新たに登場した仲間には何の魅力も感じない上、復讐心や執着心に満ちた人々、宗教じみた敵勢力、いじめ、またしてもえぐい仲間の大量死(敵による殺害)などがある。リックは消えヒルトップは焼かれ、おまけにミショーンまで消えるというひどい状態。
それでもファンとしてこの作品を最後まで見届けたいと思っている。途中で見るのやめちゃったー、話もう覚えてないわーという人も、気が向いたらぜひ続きを見てみてほしい。
※noteに投稿した記事に追記